蕎家佳 そば懐石 多摩センター

aestiva2010-08-22

以前訪れたときに日本そばの魅力を存分に感じることができたお店です。コース料理のそば会席は平日限定です。4年来行きたかったそば懐石をやっと食すことができました。カウンターに8名ほど、テーブル席4名、座敷に8名ほどの小さなお店です。和風の落ち着く店舗では切り盛りする店主と女性2名だけのスタッフですべてをこなします。席に着くと「お献立」の紙がおいてありました。これを見るだけで期待させられました。
最初に先付けとして出てきたのがとろろ豆腐です。山芋と豆腐。豆腐のなめらかさ、山芋のねばりと双方のよいところを生かした料理でした。青海苔の香りもよかったです。
「お献立」によると、前菜だけで5種類もあります。次に出てきたのが、大きな皿にそば寿司、野菜、出し巻き玉子です。見ているだけで美しく感心してしまうものでした。まさに料理の鉄人が作った料理を味わえるような感覚でした。そば寿司は美しく切られたそばを海苔に巻いたものです。小えびとねぎが入っていました。そばは寿司のように酢の味がします。そのまま食べてもよいのですが、ジュレというか煮こごりをのせてもおいしくいただけました。そばの中の小えびの香りが印象的でした。野菜はそれぞれの風味を生かした料理でした。トマトは甘露煮と斬新なものでした。蕎家佳ではトマトのおでんがレギュラーメニューにあり、トマトの魅力を存分に引き出してくれる料理を期待させます。トマトの酸味、甘み、旨み、そして旬の素材を生かした素敵な味でした。アスパラとかぶはオリーブオイルで焼いたシンプルなものをジュレにつけて食べました。ジュレは夏の暑さもあってさわやかにのどにとけていきます。アスパラ、かぶ共に主張をしない味ですが、ジュレが目立つことがないような味で、和食の中の蕎麦道の奥深さを感じる料理でした。
前菜の最後を彩るのは更科そばです。更科そばは透明感のある白く美しくみずみずしいのが特長ですが、それに一手間加えたものでした。
梅切り 更科生一本は、更科そばに梅を加えたものです。暑い日にぴったりな爽やかな酸味によって食欲が増します。
しそ切更科そばは、こちらも更科にしそを練りこんだものです。軽く塩を振って食す更科は奥深い香りと味がするものでした。
ここからは前菜が終わり、焼き物の鴨と野菜のくわ焼きが出てきました。旬の夏野菜である、とうもろこし、オクラ、ブロッコリー、パプリカ、なすが鴨に負けないだけの甘みと旨みがありました。鴨のくわ焼きは佳の定番メニューであり、鴨の旨みを考えた薄味のタレにあう焼き具合でした。
そして、蒸し物の豆腐の茶碗蒸し、銀あんかけです。舌触りのなめらかな豆腐の茶碗蒸しには素材のだしを生かした銀あんかけがかかっており、ほたて、かに、つるむらさきが一体となっていました。そばの実の香りがいい脇役となっていました。
お椀はそばがきのお椀、青豆のすり流しです。とても美しいうぐいす色の青豆すり流しにそばがきとベビーコーンが踊っていました。丁寧に裏ごしした青豆のすり流しは実に繊細な味と香りです。それはそばがきの風味を殺さないためのもので、あつあつのままのそばがきを一番おいしい状態で食べるための奇跡といってもよい味わいでした。
コースは終盤に近づいてきました。揚げ物として、海老、鮭と大根のトマト包み、ルッコラです。見た目も美しい蕎麦屋の天ぷらですが、特に鮭と大根のトマト包みは一手間も二手間もかかっており、口の中でなんともいえない幸せな味わいを感じました。
そして、〆の食事です。せいろとかけを選べますが、せいろを選びました。何度食べてもおいしい蕎家佳自慢のせいろです。
最後にデザートの甘味です。アイス、蕎麦煎餅添えは個性的であり、日頃甘いものを食べない人でも食べられるものでした。アイスの中にはそばの実が入っており、それを蕎麦煎餅をすくって食べることにより、この蕎麦懐石の終章を感じました。
2005年から始めた当ブログです。日本だけでなく世界でおいしいものを食べてきたものを書いてきましたが、今回食べたそば懐石は美味しさ、美しさ、コストなどを考えたとき。蕎家佳のそば懐石は一番であると思います。やはり、和食は奥が深いものであると改めて感じました。日本食こそ文化と共に世界に誇れるものであると確信しました。


蕎家 佳(きょうや よし)
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